JKA日本くらし薬膳協会

ニューノーマルという原点回帰について ~自転車圏のおつきあいと薬膳の密な関係~

新型コロナウイルス感染症について不安が高まっている昨今。パンデミック、感染者数という言葉が毎日のように飛び交い、世界中で情報が錯綜しています。 「Withコロナ」 新しい生活様式が求められていますが、以前と一体何が変わったのか? 旅好きコラムニストが、独特の視点で今の生活のあり方を考えます。

今も新型コロナウイルス感染症に端を発した騒動が続いています。

ここ数ヶ月、あれよあれよという間に色々な常識や慣習が覆されていくのを目の当たりにして、これまで必死に守ろうとしていたことはなんだったのだろう?という虚無感を持った人も多かったのではないでしょうか。
まさに新しい時代の転換点、まさか自分が歴史に立ち会うことになるなんて思いもしませんでした。
 
私自身もあまりの情報量に疲弊し、毎日のようにしていたSNSから離れ、ニュースを見るのをやめました。
人付き合いもググッと凝縮して自転車圏、つまり自分が自転車で行くことができる範囲のおつきあいのみ。
人がひしめく大型スーパーはやめて、地元の専門店や小さなスーパーに買い物へ行くように生活を変化させました。

そうすると何が起きたのか。

あれれ?これって懐かしい。
幼い頃我が家には自動車免許を持った人はおらず、パソコンや最新機器とも程遠いアナログな生活をしていました。その頃はまさに自転車圏が私の全てだったのです。

遊びといえば、近所の遺跡へ探検に行くことでした。縄文時代や弥生時代の遺跡を自転車で回って隅から隅まで観察したものです。縄文土器の造形に目を奪われ、弥生時代の甕棺墓や石室に得も言われぬ懐かしさを感じていたのです。

その頃のザラザラとした手触りある毎日が戻ってきたような感覚です。

インドの雑貨屋さん

SNSで国境を越えた情報を得て、遠くの紛争にまで思いを巡らせてイライラを募らせていたのが嘘のように、すっきりしました。
まさに憑き物が落ちたとはこのことでしょうか。そう人生はとてもシンプルだ。ということに気づかされたのです。

例えば今日、新しくエチオピアが好きな菜食主義者の方と知り合ったのですが、これも自転車圏のおつきあい。これまでSNSやニュースに気を取られ、遠い人の近況に気をもんでいたから気づきもしなかった出会い。これで私の人生にエチオピアという響きがまた加わりました。これまではただの遠い国だったエチオピアがその人との出会いで自転車圏になったのです。

薬膳を学んでいる皆様ならきっとピンとくると思うのですが、薬膳は本来地に足のついたものではないでしょうか。
自分の内なる声を知ること、そして自分を取り巻く環境を知ること。これが何よりも基本です。混沌としている今だからこそ自分を掘り下げることで心が落ち着くのではないでしょうか。

 

リシケシ(インド)にあるカフェの看板「傲慢な心は外に置いてこい」

リシケシ(インド)にあるカフェの看板「傲慢な心は外に置いてこい」と書いてあります。人生もかくありたい。大好きな看板の一つです。

 

旅が好きな私ですが、この「新しい」環境はとても私に合うのです。
ニューノーマルなどというと、言葉が上滑りして何か無機質に感じてしまうのですが、実はなんてことないお話です。向こう三軒両隣そんな自転車圏のお付き合いに戻っただけの話なのではないかなと思います。
こんな時代だからこそ、手触りのある毎日を送りたいなと思います。

加工された食品や情報をただ摂取するのではなくて、よりありのままの姿に近い噛み応えのある食や情報そして人付き合いを大切にしたい気持ちが高まっています。

そういえば中学生の頃、友人に「あなたって、スルメみたいだよね」という賞賛?をいただいたことがあります。
地味で滑稽な生き様だけど、噛めば噛むほど面白いなんて最高ではないですか。スルメ人生、満喫中です!

 

薄田泰代 / Yasuyo Susukida
現代風刺写真家。
NOMAD ART JOURNEY/susutabi主宰。
インドのアーユルヴェーダ、チベット医学そして多様性と多面性に魅せられて渡印。現在は帰国し日本とインドの精神的2拠点生活を続けている。4野生児の母として、奮闘中…いやもはや修行中の毎日。枕が変わらないと寝られない旅人体質。

最終更新日:2024/10/22 14:09:54