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腸内環境にまつわるあれこれ~その②腸内細菌~[吉田管理栄養士]

腸内環境にまつわるあれこれ~その②腸内細菌~[吉田管理栄養士]

前回は腸の働きについてご説明させて頂きましたが、今回も引き続き腸内環境の大切さについてお伝えしていきたいと思います。 では腸の健康を左右するといわれる腸内細菌について詳しくまとめていきますね。

前回のコラムはこちら
「腸内環境にまつわるあれこれ〜その①~」

腸内環境にまつわるあれこれ~その②腸内細菌~[吉田管理栄養士]
ヒトがもつ細菌は、皮膚、口腔をはじめ、胃や腸などの消化管と、ありとあらゆる場所に存在しますが、中でも、小腸の下部から大腸に最も多く存在します。
腸内に住む細菌の数は100兆個以上、重さにすると約12kgあるといわれます。量や重さに驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、この量からしても私たちの身体に与える影響が大きいことが分かりますね。
この腸内の細菌の集まりを「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」といい、近年ではこの菌たちをお花畑にみたてフローラという言葉を使い、「腸内フローラ」と呼ばれ注目を浴びています。 
腸内細菌は人それぞれ持っている菌が異なり、年齢によって数が変化するといわれます。
まず生まれたときは無菌状態で、母乳やミルクを飲みビフィズス菌が増えていきますが、乳児にハチミツをあげてはいけない理由がここに関係します。まだ腸内フローラが形成されていないことでボツリヌス菌が増殖、その排除が困難だからです。
離乳食が始まると徐々に腸内細菌は増え、家族の影響も受け、腸内フローラが大人に近づき、腸内細菌のバランスは両親と似ていくといわれます。
人により腸内細菌は様々で、食事や生活習慣によっても変わりますが、腸内細菌の割合については大きく変わることはないようです。
そして60歳以上になってくると、自然と善玉菌が減り、悪玉菌が増え始める傾向があるといわれます。理由ははっきりとは分かっていないようですが、これを踏まえ、少しでも悪化を免れる準備をしていきたいですね。
「気を付けていてもどうせ善玉菌は減ってしまうんでしょ」とがっかりしてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、元々腸内環境が良い人と、良くない人では差が出てくると思いますし、食生活が関係なくなるわけでもないので、良い人はなるべく悪くならないように、良くない人は更に悪化させないように、日頃からしっかり腸内環境を整えておくことが大切ではないでしょうか。
さて理想的な腸内細菌のバランスですが、善玉菌:日和見(ひよりみ)菌:悪玉菌=271といわれており、このバランスが崩れ悪玉菌が増えると様々な不調が起こります。
腸内環境にまつわるあれこれ~その②腸内細菌~[吉田管理栄養士]
ではそれぞれの働きについてみていきましょう。
簡単に述べますと
・善玉菌消化吸収に関わり、身体にとって良い働きをする菌
・日和見菌善玉菌優勢のときは良くも悪くもなく、悪玉菌が優勢になると悪い働きをする菌
・悪玉菌有害な毒素を作り出したり、身体にとって悪い働きをする菌
詳細は以下の通りです。

働き
善玉菌(20%) ・糖分を分解、吸収→腸内を酸性にして悪玉菌を抑制する
(○乳酸菌…乳酸を作り出す*注1  ○ビフィズス菌…乳酸、酢酸を作り出す)
・腸の動きを活発にする
・食べ物の消化吸収を促進する
・ビタミン類(VB1・VB2・VB6・V12・VK・ニコチン酸・葉酸)の合成
・免疫力UP
・食中毒菌や病原菌による感染の予防
など
日和見菌(70%) ・ビタミン合成など有用な働きもするが、悪玉菌優勢時には一緒になって有害物質を作る
悪玉菌(10%) ・たんぱく質を分解、吸収し、アンモニア、硫化水素、インドールなどの有害物質を作る→腸内をアルカリ性にする
・腸内の腐敗を進め、下痢や便秘をおこす。
・免疫力を低下させ、感染症の原因となる
・発ガン性物質を作る。
・おならや便の臭いをきつくする
・ビタミン合成にも関わるため悪いとはいいきれないが、優勢に傾くことは避けた方が◎

 

*注1ちなみに乳酸菌とは乳酸を作りだす細菌の総称
次に菌は大きくグループ分けされます。

グループ
善玉菌 アクチノバクテリア
日和見菌 ファーミキューテス、バクテロイデス
悪玉菌 プロテオバクテリア

さらにそのグループに属する菌についてみていきましょう。代表的な菌と特徴を挙げます。

種類 特徴
善玉菌 ビフィズス菌(アクチノバクテリア) 乳酸や酢酸をつくります
日和見菌 ラクトバチルス(ファーミキューテス) 種類はとても多く、ブルガリア、ガセリ、カゼイなどがあり、
さらに菌株に分けられるが種類により整腸の働きは変わります。
日和見菌 ブドウ球菌(ファーミキューテス) 黄色ブドウ球菌など悪さをする菌が有名ですが、一部を除くブドウ球菌は身体を守ってくれる働きがあります。
日和見菌 バクテロイデス(バクテロイデス) 普段病原性はないが、異常に増加すると日和見感染を起こすことがあります。
日和見菌 クロストリジウム(ファーミキューテス) ボツリヌス、アリアケ、ウェルシュなど、食中毒や、発がん性物質を作り出す菌があります。
悪玉菌 大腸菌(プロテオバクテリア) 強力な病原性があるものは病原性大腸菌といわれますが、無害のものでも血液や尿路系などに入ると病原体となることがあります。
悪玉菌 クレブシエラ(プロテオバクテリア) 病原菌のグループのひとつで感染症を引き起こしたり、クローン病や潰瘍性大腸炎などの疾患の原因となることがあります。

さらに代表的な菌を挙げます。

グループ 種類
日和見菌 ラクトバチルス ブルガリア、ガセリ、カゼイ
日和見菌 ブドウ球菌 黄色ブドウ球菌
日和見菌 クロストリジウム ボツリヌス ウェルシュ、アリアケ
日和見菌 バクテロイデス バクテロイデス・プレビウス

一部の菌ですが、それぞれ特徴や及ぼす作用は様々ですね。
複雑に思う方もいらっしゃるかと思いますが、表ごとにみていくことで、イメージして整理することができたら良いなと思います。
腸内環境を整える食品などについてはまた次回お伝えしていきたいと思います。
  
吉田桃子/Momoko Yoshida
管理栄養士
くらし薬膳 栄養アドバイザー

最終更新日:2024/10/23 17:08:11