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あぶらのおはなし~その②脂肪酸のはたらきと食品[吉田管理栄養士]

あぶらのおはなし~その②脂肪酸のはたらきと食品[吉田管理栄養士]

前回は脂質の役割や、簡単に脂肪酸の種類をお伝えしましたので、今回はより具体的に脂肪酸それぞれの特徴や働き、含まれる食品などをお伝えしていきます。 ①飽和脂肪酸 ②トランス脂肪酸 ③不飽和脂肪酸(一価不飽和脂肪酸)・・・オメガ9系脂肪酸 ④不飽和脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)・・・オメガ6系脂肪酸 ⑤不飽和脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)・・・オメガ3系脂肪酸

▶前回の記事 「あぶらのおはなし~その①」はこちら

 

飽和脂肪酸の特徴

摂りやすい食品が多く、大きなエネルギー源となりますが、摂りすぎると健康面でのリスクが高まります。

【過剰摂取によって招きやすくなる疾患】


・肥満
・血中総コレステロールの増加など脂質異常症
・心筋梗塞など循環器疾患など

しかし摂らな過ぎても脳卒中などのリスクが高まると言われており、飽和脂肪酸は絶対に良くない、摂ってはいけないというわけではないので、過度な制限はおすすめ致しません

【飽和脂肪酸が多く含まれる食品】


脂の多い肉、ベーコンなどの加工肉、バター、チーズ、卵黄、チョコレート、ココナッツ油、パーム(アブラヤシ)油

 

トランス脂肪酸とは



身体に良くないものとして認識されている方は沢山いらっしゃると思いますが、どのようなものか曖昧な方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
トランス脂肪酸は天然の食品に含まれるものと、油脂を人工的に手を加えた食品に含まれるものがあります。
人工的なものは、常温で液体である油脂を、固形や半固形の油脂を製造するために部分的に水素添加(硬化処理)を行ったものに、トランス脂肪酸が含まれます。

(例)マーガリンやファットスプレッド、ショートニングなど

あぶらのおはなし~その②脂肪酸のはたらきと食品[吉田管理栄養士]

 【トランス脂肪酸が良くないといわれる理由】

・人にとって必要不可欠なものではなく、食品から摂る必要がない
・人の体内で代謝されにくい
LDL(悪玉)コレステロールを増やし、HDH(善玉)コレステロールを減らすことにより、心疾患、冠動脈疾患などのリスクが上がる
・免疫機能の低下
・アレルギー性疾患との関連

脂質自体の摂取量が多い欧米人はトランス脂肪酸の摂取量も多く、トランス脂肪酸については欧米人を対象とした研究が多いので、日本人に同様に当てはまるかは定かではないようですが、食事の欧米化が進んでおり、脂質の摂取が多くなっている傾向もみられるため、摂らないに越したことはないと思われます。
最近ではトランス脂肪酸を考慮したマーガリンなどもありますが、菓子やパンなどにも多く含まれるものがありますので注意が必要です。
トランス脂肪酸の摂取量は全体の摂取エネルギーのうち1%よりも少なくするよう勧告されており、例えば一日の摂取エネルギーが2000kcalならトランス脂肪酸の量は約2グラム程度となります。

 

不飽和脂肪酸(一価不飽和脂肪酸)・・・オメガ9系脂肪酸の特徴

 

一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸は血中のLDL(悪玉)コレステロールを下げる働きがあるといわれ、動脈硬化予防、心疾患予防などの効果が期待できるといわれております。また腸の動きを活発にし、便秘改善の効果も期待できます。
不飽和脂肪酸は構造上、酸化しやすく過酸化脂質になりやすいという欠点がありますが、オレイン酸は酸化しにくいのが特徴です。
オレイン酸を多く含む代表的な油はオリーブ油ですが、オリーブ油はポリフェノールやビタミンE、β-カロテンなど抗酸化成分を含むので更に酸化から守ってくれるといえます。ただし全く酸化しないわけではありません。

 

不飽和脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)・・・オメガ6系脂肪酸の特徴

 

リノール酸やアラキドン酸があり、血中のコレステロールを下げる働きや認知機能改善などの効果があるといわれておりますが、摂りすぎるとHDL(善玉)コレステロールも下げたり、免疫細胞が働きにくくなりアレルギーを引き起こしやすくなるなどといわれておりますので注意が必要です。
リノール酸は、人の身体ではほとんど合成できない必須脂肪酸なので、食事で摂る必要がありますが、意識しなくても最も摂取されやすい脂肪酸でもあるので、過剰に摂ってしまうことの方が懸念されます。

【リノール酸を多く含む食品】


大豆油、コーン油、ごま油、紅花油など
植物性油脂と記載される菓子やインスタントラーメンなどにも注意ですね。

【アラキドン酸を多く含む食品】


レバー、鶏卵など

 

不飽和脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)・・・オメガ3系脂肪酸の特徴

 

αリノレン酸は人の身体で合成できない必須脂肪酸ですが、体内に入るとEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が合成されます。
オメガ3系脂肪酸は最も積極的に摂っていただきたい脂肪酸です。

【期待できる効果】


・血中中性脂肪の低下
・悪玉コレステロール低下
・血管を強くしなやかに
・動脈硬化予防
・高血圧予防
・血栓予防
・脳の活性化
・アレルギー緩和
・生理痛改善
・アトピー改善

他の脂肪酸に比べ期待できる効果が多いですよね。また、体内にとどまりにくく、体脂肪になりにくいことも特徴です。

 

【αリノレン酸が含まれる食品】


えごま油、あまに油
熱や酸化に弱いため扱いに注意。

 

DHAEPAが多く含まれる食品】


アジ、サバ、イワシなどの青魚
鯖缶などにも含まれます。

 

あぶらのおはなし~その②脂肪酸のはたらきと食品[吉田管理栄養士]

同じ脂質の仲間でもそれぞれ特徴が異なり、なんとなくこれは摂りすぎてはいけないもの、しっかり摂ったほうが良いものをイメージできましたでしょうか。

このあたりのことはご存知の方もたくさんいらっしゃるかと思いますが、また次回、より具体的な油の摂り方についてお伝えしていきたいと思います。

吉田 桃子 / Momoko Yoshida
管理栄養士
くらし薬膳 栄養アドバイザー

最終更新日:2024/10/24 13:54:50