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糖質は敵?~働きや、身体に及ぼす影響、上手に付き合う方法~[吉田管理栄養士]

糖質は敵?~働きや、身体に及ぼす影響、上手に付き合う方法~[吉田管理栄養士]

糖質、炭水化物、血糖値、気になさっている方も多いのではないでしょうか。 近年、たんぱく質はたくさん摂って、糖質は控えるという食事の傾向が多くみられます。 スーパーやコンビニなどに並ぶ商品を見ても、高たんぱく質を売りにしたお惣菜や低糖質の食品なども多くみられますね。私自身も糖質を摂りすぎないように意識をしていたり、糖質制限のダイエットを指導した経験もあります。 なぜ糖質が悪もののように扱われる傾向があるか、どのように気を付けなくてはいけない栄養素であるかを今回は簡単にお話します。糖質にまつわる話は奥が深く、お伝えしきれない部分はまた後にお話したいと思います。

糖質とは


砂糖はもちろんのこと、お米や小麦粉、いも類などに多く含まれ、体内ではブドウ糖に分解され身体のエネルギー源となる栄養素です。
三大栄養素のひとつで炭水化物と表されますが、炭水化物は糖質と食物繊維と合わせたものですので、成分表示を確認するときは注意が必要です。
脂質は1gあたり9kcalのエネルギーになりますが、たんぱく質、糖質は1gあたり4kcalのエネルギーになります。そのため脂質が太る原因だと長く思われてきました。確かに過剰摂取は良くないですし、油の種類にもよりますが、魚に多く含まれるDHAEPAなど良質な油もありますので、脂質はダイエットの敵という考えよりも、糖質は敵という考えが増えてきているように感じます。

 

糖質の働きは?


人の体内で食物から分解されたブドウ糖は小腸から吸収されます。
そして肝臓に送られ、
・肝臓のエネルギーとなる
・グリコーゲンとして蓄えられる
・血液中に運ばれる
などにわけられます。

血液中のブドウ糖は筋肉や脳のエネルギー源となり、とても大切な栄養素です。脳には糖が必要であるということは多くの方に知られているかと思います。
ただ、人の体は飢餓状態になったときの対策方法がばっちりできていて、糖が不足したときには脂肪からつくられる「ケトン体」がエネルギーとなってくれます。
逆に過剰摂取したときの対策は手薄なので、たくさん食べてしまうと肥満になりやすくなったり、高血圧、脂質異常症、糖尿病など生活習慣病を引き起こしやすくなってしまうのです。

糖質は敵?~働きや、身体に及ぼす影響、上手に付き合う方法~[吉田管理栄養士]

糖質を摂ると何が起こる?

血液中にブドウ糖が入ること(血糖値上昇)で膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、その作用により細胞に取り込まれエネルギーとなり、また、使いきれず余ったブドウ糖はグリコーゲンとして筋肉などに蓄えられる他、中性脂肪を合成します。
このようにしてインスリンは食後の血糖値を下げていきますが、糖質の過剰摂取などで血糖値が急上昇してしまうと、血糖値がなかなか下がらなかったり(1)、もしくはインスリンがたくさん出てしまい、脂肪を溜め込みやすくなったり、血糖値が急激に下がるということも考えられます。

1)血糖値がなかなか下がらないという場合は ・インスリンの作用が低下している ・インスリンの分泌が少ない ・インスリンの分泌が遅い などが原因ですが、これが続き慢性化したものが「糖尿病」ということになります。
通常、血糖値は一定に保たれ、一般的に空腹時では70110mg/dLが正常範囲です。食後でも140mg/dLまでとし、食後2時間くらいたてば空腹時の数値に戻ります。
この範囲を超えて低くなると低血糖、高くなれば高血糖という状態であり、食後2時間程度たっても空腹時の値に戻らない場合を食後高血糖といいます。
 
●低血糖となる原因
糖尿病薬の効きすぎ、インスリン(血糖値を下げる作用)の過剰、グルカゴン・アドレナリン・コルチゾールなど(血糖値を上げる作用)の不足、その他疾病など。生活習慣では激しい運動、食事制限など。
●低血糖の症状
頭痛、動悸、手のふるえ、ぼーっとする、眠気、脱力感など。

●高血糖となる原因
1)の他、生活習慣では過食、運動不足、ストレスなど。
●高血糖の症状
喉の渇き、倦怠感、疲労感、手足のしびれなど。

 

糖質と上手に付き合う方法

◆血糖値スパイクを起こさないようにすること

血糖値スパイクとは血糖値の急上昇、急降下のことをいいます。
糖質が多く含まれる食品を過剰摂取すると、インスリンの働きが追い付かず、血糖値がぐんと上がります。
また急に血糖値が上がることでインスリンはたくさん分泌され、今度は血糖がぐんと下がることになります。この乱高下は身体に負担をかけ、糖化という老化の原因ともなる現象も進めることになります。糖化についてはまた機会がありましたらお話させて頂きたいと思います。
血糖を急上昇させやすくする行動としては、空腹時にいきなり糖質が多いものを食べたり、早食い、ジュースなど砂糖が含まれたドリンクなど、特に注意が必要です。

 GI値が低い食品を積極的に摂り入れること

GI値とはGlycemic Index(グリセミック・インデックス)の略で、食後血糖値の上昇度を示しています。
ブドウ糖を100とし、この値が高いほど血糖を上げやすく、低いほど血糖が上がりにくい食品ということになります。
GI食品:70以上 中GI食品:5669 低GI食品:55以下

糖質は敵?~働きや、身体に及ぼす影響、上手に付き合う方法~[吉田管理栄養士]

また、GLGlycemic Loadグリセミックロード)値といって、食品に含まれる糖質量にGIをかけて100で割ったものは、実際の食べる量が考慮されより実用的とされています。

  ◆食物繊維が多い食品を積極的に摂り入れること

食物繊維は血糖値の上昇を緩やかにする働きがあります。特に水溶性食物繊維が多く含まれる食品がおすすめです。
海藻類、きのこ類、おくらや納豆などのねばねば食品、野菜など。

  ◆食べる順番に気を付けること

食物繊維が多く含まれる食品から先に食べることをおすすめします。ベジファーストという言葉をご存知の方も多くいらっしゃると思います。
甘いおやつを食べる際は先に豆乳(無調整が◎)やナッツなどを食べたり、食事の際は汁物や副菜から食べるようにすることで血糖値の上昇を緩やかにすることができます。
特に長時間の空腹は急に食べ物が入ってきたとき血糖が急上昇しやすくなりますので、お腹がすごく空いているときこそ、ベジファーストは大切ですよ。
 
 糖質は身体の大切なエネルギー源ですし、スポーツの際も素早くエネルギーになるので、必要な栄養素ですが、摂り方によって肥満や病気、精神にも影響を及ぼすといえますので、普段の食生活では摂り方に気を付けて上手に摂り入れていくことをおすすめします。
また糖質制限など極端なダイエットを独自で行うことはあまりおすすめしません。専門家に相談したり、極端な食事法ではなく、バランスの良い食生活に気を付けながら運動療法がおすすめです。
糖質を敵にするのも味方にするのも、摂り入れ方で大きく左右される栄養素だと思いますので、是非意識してみてくださいね。

 

 

吉田 桃子 / Momoko Yoshida
管理栄養士
くらし薬膳 栄養アドバイザー
 

最終更新日:2024/11/07 15:38:00