ぐっと冷え込んだかと思えば、ぽかぽか暖かい日があったり。乾燥も感じますし、これだけ寒暖差の激しい日が続くと体調を崩す人が増えてきますよね。「薬膳」はいかがでしょうか?
「漢方」とは中国古来の自然哲学に基づいた医学のことです。人間も自然の一部と考え、心と体全体をみて、自然薬を用いるなどして不調の改善を試みるものです。漢方薬や鍼灸、薬膳なども「漢方」の一部になります。基本の「薬膳」食材とはどんなものがあるのでしょうか?
ここでは漢方(薬膳)でよく使う食材をご紹介します。スーパーでも手に入り、普段から買って食べているものも、実は薬膳食材なのです!
○シナモン
お菓子の香りづけなどにおなじみの「シナモン」ですよね。中にはあまり得意ではないなんて方もいるかもしれません。しかし、シナモンには、体を温めて、冷えをやわらげてくれる働きがあります。また、胃腸も温めてくれるので、消化不良にもいいと言われています。
○黒豆
お正月によく食べられる「黒豆」。黒豆黒い食材全般疲れやすい人におすすめです。また、黒豆は<水>や<血>の巡りもよくしてくれる食材でもあります。
○小豆
「小豆(あずき)」は、胃腸の調子を整える作用があります。<水>の循環もよくしてくれます。体から余計なものを出してくれるので、むくみが気になる人、吹き出物や肌荒れにもおすすめです。
○しょうが
体を温める食材としておなじみの「生姜(しょうが)」。意外にも、薬膳でもよく使われています。内臓から温めることで、胃の調子がよくなり、食欲を増す働きもあると言われています。
○りんご
体を潤す作用がある「りんご」。秋が旬と思われがちですが、体にこもった余計な熱も冷ましてくれます。消化を助け、便秘解消にも役立ちます。体を冷やす作用があるので、冷えを感じる人はシナモンやしょうがなど体を温める食材と一緒にとるとよいですね。
○はちみつ
健康食材として注目されている皆さんにおなじみの「はちみつ」。咳やのどにいいと言われるのは、肺を潤す作用があるためです。皮膚の乾燥にも良いです。日頃、疲れやすい人や食欲がわかない人にも、積極的にとり入れてもらいたい食材の一つです。
○ゴジベリー(クコの実)
杏仁豆腐の上によくのっている赤い果実。あれが「クコの実」です。「ゴジベリー」とも言われ、最近ではスーパーフードとしても知られています。目の疲れによく用いられることが多いとともに、滋養をつけること、老化防止も期待される食材です。
○なつめ
スーパーなどではあまり見かけない食材かもしれませんが、輸入食材店や大きいスーパーで見かけたときにはぜひ購入してもらいたい薬膳食材が「干しなつめ」です。気を補ってくれる働きがあるので、元気がないとき、気持ちが落ち込んだときにはぜひ食べたい食材ですね。また、貧血の予防にも有効といわれています。
「漢方」を取り入れる上で大切なのは、まず自分のもともとの体質、現在の体調をよく見極め、それにあった対策をとることです。それがわからないのに、まず対策を何を取り入れれば良いのかってわからないですよね。
「もともとの体質」「現在の体調」をあわせたものを漢方では「証(しょう)」と呼びます。
<気><血><水>から体質を考えていきます。
この3つがバランスよく体の中に存在し、循環しているのが健康な状態であり、この中のどれかが、不足したり、体のどこかで滞ったりすると、不調が起こると言われています。
今のあなたにあてはまるものはどれでしょうか?
誰もがどれかひとつのタイプにあてはまるのではなく、人によっては複数のタイプにあてはまることもあると思います。その場合は、あてはまるタイプすべての説明をチェックしてみてください。
【特徴】
・疲れやすい
・むくみやすい
・あまり食欲がない
・手足が冷たい
・下痢をしやすい
<気>が不足している人は五臓の中で<脾>=胃腸のパワー不足と言われています。食べすぎると、胃腸に負担がかかってしまうので、消化のよいものを適量食べることを心がけるとよいです。
また、冷たい飲み物や生ものも胃腸の働きを妨げてしまうので注意しましょう。
【特徴】
・イライラしやすい
・うつっぽくなりやすい
・お腹にガスがたまりやすくゲップやおならがよく出る
・生理前に胸が張る感じがする
・ストレスから食べすぎることがある
このタイプは、イライラしたり、落ちこんだり、気分が安定しにくいタイプです。
怒りを感じると五臓の中の<肝>に悪影響があるというのが漢方の考え方です。気持ちがリラックスできるものを見つけて日常に積極的に取り入れること、甘酸っぱいものを食べることが、<肝>によい働きをするといわれています。
【特徴】
・やせ気味・顔色が悪い
・足がつりやすい
・皮膚が荒れやすい
・眠りが浅いなど睡眠トラブルを感じる
これらは、貧血気味で顔が青白いことが多いタイプです。
体の中に<血>が足りていないために、さまざな不調が起こるとされています。毎月生理がある女性には起こりやすい不調といえますね。血を増やすはたらきのある食べ物を積極的に摂取することが何より重要です。
【特徴】
・慢性的な肩こりがある
・よく頭痛が起こる
・生理痛がひどい
・肌がくすみがち
・日焼けや傷跡が治りにくい
<血>が体のどこかで滞ってしまうことが原因となって、体のあちこちで痛みが発生することがあります。傷が治りにくかったり、目の下にクマがあったりするのも、血行が悪いためです。
【特徴】
・のどの渇きを感じる
・暑がりなほう
・暑さに弱いため夏が苦手
・皮膚がカサカサしている
・寝つきが悪い
体内の<水>が足らず乾燥しているのが「陰虚」です。
少しでも暑いところに行くと、あっという間にのぼせてしまいます。冬場も外はいいですが、暖房の効いたところは苦痛なはずです。いつも気持ちがたかぶっており、すんなり寝つくことが難しい状況です。
【特徴】
・ぽっちゃり型
・むくんでいると感じることが多い
・甘いものや油っこいものが好き
・吹き出ものがよく起きる
・湿度の高いところにいるとしんどい
体内の<水>の循環が悪いため、むくみがちなのが「陰虚」タイプ。
ただむくんでいるだけでなく、肥満型なことも多いようです。甘いものや油っこいものを好んで食べることで、ますます体内の<水>が増えてしまい、どうにもならなくなってしまうこともあります。
「薬膳」とは漢方の考え方に基づいて、体質や体調、症状、季節に合わせた食べ物を組み合わせて摂取するもの。といっても難しいことではありません。 「寒いから体があたたまるものを食べる」「旬のものを食べる」それも薬膳のひとつになります。薬膳を使ったドリンクなら、毎日の中で手軽に取り入れられますね。 飲み物なら、日ごろあまり自炊をしない人でも、手軽に「薬膳」を体験することができるかもしれません。今回は、タイプごとにおすすめの食材とドリンクをご紹介します。
○「気虚」タイプには、「干しなつめとクコの実のはちみつ漬けのホットミルク」
血を増やす干しなつめとクコの実のはちみつ漬けを作っておきましょう。飲みたいときにお湯で割るのもいいですし、潤いを増やしてくれる牛乳で割ると、ほんのりした甘味がたまりません♪もちろん牛乳は温めておいてくださいね!
○「気滞」タイプには、「ゆずとしょうがのはちみつ漬けの紅茶」
「気帯」タイプにおすすめする薬膳ドリンクは、市販のゆず茶としょうがのはちみつ漬けを紅茶で割って飲む「ゆずしょうが紅茶」。ゆずには気を巡らせる作用が。しょうがは体を温めて、胃の調子を整えてくれます。ゆずとしょうがのはちみつ漬けは自作しておくのもいいですね。
○「血虚」タイプには「プルーン紅茶」
プルーンは血を補ってくれる食材です。また、紅茶は体を温めて、気持ちをリラックスさせてくれる作用があります。スーパーで見かけるドライプルーンに熱い紅茶を注いで飲むと薬膳ドリンクになります。プルーン紅茶をたくさん作って、ヨーグルトに入れて食べてみても良いですね。
○「瘀血(おけつ)」タイプには、「黒豆ソイミルク」
血の巡りをよくする作用を持つ黒豆は「瘀血」タイプが積極的にとりたい食品です。また、大豆は血液をサラサラにすると言われていますので、豆乳やきなこもおすすめの食品になります。
○「陰虚」タイプには、「カモミールのミントミルクティー」
体のほてりを冷ますのに効果的なミント。また、牛乳は足りなくなった<水>を補ってくれる働きがあります。体を温める紅茶ではなく、疲労回復の作用があるといわれているカモミールティーを使ってみましょう。
○「水滞」タイプには、「おろし生姜入りプーアール茶」
微生物によって発酵されているため、独特の風味や香りがあるプーアル茶。体を温める作用があるものです。同じく体を温める作用を持つ生姜をすりおろして入れてみてはいかがでしょうか。体が温まることで、体内の余計なものが外に出ていくことが期待できます。
「薬膳」を身近に感じていただけることができたでしょうか?ごく当たり前に食べているものが、実は漢方・薬膳の考えとリンクしていることもありますよね。「薬膳」が体調管理に役立てられるように取り入れて見てくださいね。
渡辺愛理 / Airi Watanabe
管理栄養士。 温活料理研究家。
大学卒業後、病院・介護老人保健施設での勤務を経て、フリーランス管理栄養士となる。自身が冷え性に長年悩んできた経験から、冷え性に悩む方への食事カウンセリングや料理教室講師をメインに、そのほかレシピ制作やコラム執筆などを行なっている。
最終更新日:2025/04/01 11:14:21
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