JKA日本くらし薬膳協会
旅する薬膳!日本で増え続けるインドカレーの秘密に迫る

旅する薬膳!日本で増え続けるインドカレーの秘密に迫る

枕が変わると熟睡できる根っからの旅人がお送りする「旅と薬膳」について、掘り下げていくコーナーです。世界の様々な地域や歴史上の様々な場面で登場する薬膳を旅してみませんか。初回は多様な価値観に溢れたインドとカレーについてです。

今や日本のどこにいてもインドカレー屋さんを見ない日はないのではないかと思うくらい身近なインドカレー。ほとんどがネパール人コックだと言われるインドカレー屋さんですが、最近はインド人シェフが作るインドカレーも増えています。でもネパール人が作るからそれはインドカレーではないというのは大きな誤解。インドでは、ネパールから来たコックさんがレストランの厨房や家のお抱え料理人として腕をふるうのは特に珍しい光景ではありません。つまり、誰が作っていてもそこにインドカレーの真髄がある限りそれはインドカレーなのです。今回はそんなインドカレーの秘密と薬膳について迫ってみたいと思います。

薬膳の考え方とインドのあり方の共通点

日本の9倍もあるインドの国土は南北に長く、また東西にも張りだすナンのような形をしています。人口は13億人を超え、インドの特異性はまさにひしめき合う多様な価値観です。お札に印刷されている主要な言語だけでも17言語、人種も性別のあり方も宗教もまさに多種多様な国家です。同じインドの中でも様々な環境と気候帯が存在し、宗教観も相まってそれぞれの地域で手に入る食材や必要とされるものがまったく違います。インドのこの風土と文化こそ薬膳の考え方と通じるところがあります。
薬膳の考え方の基本として、五行・五性がありますが、これは人の持つ体質や体調・環境や食材の持つ質が密接に絡み合って薬膳が成り立つということを意味しています。つまり多種多様な環境や文化を持ちながら個性を持って共存するインドのあり方は薬膳の考え方を体現していると言えるのではないでしょうか。

旅する薬膳!日本で増え続けるインドカレーの秘密に迫る

ひしめき合う多様な価値観をそのままに(インド南部)

インドカレーと薬膳とは

面白いことに日本にあるインドカレー屋さんはその多くがインドカレーを日本に合うようにアレンジしています。反対に日本人オーナーが作るインドカレーは、その味に惚れ込んで作っているからかまさにインド現地の味であることが多いものです。どちらも魅力的ですが、それはきっとインドの考え方には「現地の環境や人に合うものを作る」という薬膳に通じる考え方があるからなのかもしれません。まったく同じものをそのまま日本に持ってきて「これがインドカレーだ」というのではなく、インドカレーの真髄は継承しつつも日本の環境や日本人に合うものへとアレンジする。これこそが、まさに薬膳の考え方と同じですね。

日本全国の亜熱帯化がインドカレーを呼び寄せている? 

ここまで薬膳の考え方として、体質や環境に合うものを大切にするということを述べました。その考え方を応用すると、環境が変わったから必要な食べ物が変化しているということもまた可能性としてあげられるのではないでしょうか。近年特に夏の暑さが著しく、2020年夏の東京オリンピック開催や学校での運動にも影響を与えています。つまり少しずつではありますが、日本を取り巻く環境自体に変化が起こっているということになります。全国の気候が亜熱帯に近づけば近づくほどに、インドなどの東南アジアで求められてきた料理や食材が日本でもますます求められることになっていくのかもしれません。環境が変われば、必要な薬膳もまた変わっていきます。一度学んで終わりではなく、その考え方を応用して役立てていくことが大切です。

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インドカレーに使用される多様なスパイス。オーダーに合わせて調合してくれる(インド/ゴア)

簡単すぎるインドカレーの日本アレンジレシピ

最後に日本で身近に手に入る食材のみで簡単にできるインドカレーの日本アレンジレシピをお届けします。特別なスパイスは全く必要ないので、本格的なインドカレーにチャレンジしたことがない方にぜひ作っていただければ嬉しいです。こんなものはインドカレーではない!という方、わかります。わかりますとも。でもここはインドカレー人口をまずは増やすと思ってこらえてください!

<用意するもの>

・油
・鶏肉 200~300g
・玉ねぎ(みじん切り)中2~3個
・トマト 中2個
・生姜(みじん切り)1cm
・ニンニク(みじん切り)2欠片
・市販のカレールー 3種類
・ブーケガルニ(あれば) 適量

1.熱した鍋に油を引く

2.ニンニクを入れ、油に香りをつける

3.みじん切りした玉ねぎを加え、木ベラでかき混ぜながら弱火であめ色になるまでよく炒める

4.生姜を加える

5.潰したトマトと塩少々を加えてさらに炒める(缶入りのトマトでも可)

6.鶏肉と水とブーケガルニを入れて煮詰める

7.火を止めて市販のカレールーを3種類入れて溶かす

8.もう一度煮詰めたら出来上がり

<ポイント>

・多めの玉ねぎを焦がさず、あめ色になるまでよく炒めること
・複数のカレールーを混ぜて使う事
→それぞれのルーでスパイスの配合が異なるので、手軽により多くのスパイスをとることができます

<辛いものが苦手な方やお子様がいるご家庭>

種類の異なる甘口のルーのみを選んでください。

<辛いものがお好みの方>

辛口のルーを選ぶことと、3の工程でガラムマサラや唐辛子を加えて炒めるとさらに辛口になります。

<もう少し凝りたい方>

袋に入れた鶏肉にヨーグルトとカレー粉またはガラムマサラを混ぜて30分くらい置いて馴染ませてから使うとより本格的な味になります。

<注意!>

市販のカレールーには牛や豚由来の材料を使っていることがあります。宗教的な理由等でそういった食材を食べられない方に作る際には十分気をつけてください。

インドカレーというと難しそうなイメージやたくさんのスパイスを揃えなければいけないイメージがありますが、日本で普通に手に入る食材でも十分美味しいカレーになります。いろいろなルーの配合を試して、自分なりの黄金レシピを研究してみてはいかがでしょうか。そして、もっと本格的なインドカレーを作りたくなったら、少しずつスパイスを揃えていくのがオススメです。とっておきのレシピを見つけたら私にも是非教えてください!日本に美味しいインドカレーがますます増えることを願っています。

 


薄田泰代 / Yasuyo Susukida

現代風刺写真家。
NOMAD ART JOURNEY/susutabi主宰。
インドのアーユルヴェーダ、チベット医学そして多様性と多面性に魅せられて渡印。現在は帰国し日本とインドの精神的2拠点生活を続けている。4野生児の母として、奮闘中…いやもはや修行中の毎日。枕が変わらないと寝られない旅人体質。

 

最終更新日:2025/01/27 10:49:52