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あぶらのおはなし~その①(連載)[吉田管理栄養士]

あぶらのおはなし~その①(連載)[吉田管理栄養士]

① 脂質《あぶら(油・脂)》を理解しよう

私たちが普段摂取する油脂にはたくさんの種類がありますが、みなさんは普段「あぶら」の摂り方について気を付けていることはありますか?

「お肉の脂は身体に良くない」「オリーブ油やゴマ油は身体に良い」「青魚に含まれるDHAEPAはたくさん摂った方が良い」など、ざっくりと認識されている方は多いのではないでしょうか。
 
そこで今回は分かりやすく、脂質の働きや「あぶら」の種類についてご説明させていただきます。

あぶらのおはなし~その①(連載)[吉田管理栄養士]

あぶらの表現

まず、「あぶら」を表す言葉は油、脂、脂質、脂肪など色々ありますが、あまりよく理解されていらっしゃらない方のために簡単にお伝えしておきます。
 
常温で液体のもの。 (食品)なたね油、ごま油、オリーブ油などを思い浮かべると分かりやすいですね。
常温で固体のもの。 (食品)バター、ラード、ヘッドなどを思い浮かべてください。
脂質上記の油脂や脂肪酸、グリセロール(グリセリン)、コレステロールなどの総称。栄養学的表現。
脂肪体の中についた中性脂肪。皮下脂肪、内臓脂肪、体脂肪などの言葉を思い浮かべると分かりやすいですね。
 
あいまいな感じで使われていることもありますが、なんとなくでも表現の仕方の違いを理解しておきましょう。

 

脂質の種類

脂質は大きく次の3つに分けられます。

分類 説明
単純脂質 グリセロール(グリセリン)と3つの脂肪酸で構成されたもの。
中性脂肪(トリアシルグリセロール)が代表的で、体でエネルギー利用されます。
複合脂質 単純脂質に脂質以外の成分が加わったもので、リン酸がくっついたものをリン脂質、糖がくっついたものを糖脂質といいます。両親媒性(親水基…水になじみやすい/親油基…油になじみやすい)をもつものが多く、細胞膜の構成、情報伝達などに関わります。
誘導脂質 単純脂質や複合脂質が加水分解してできる疎水性化合物で、脂肪酸やコレステロール(ステロイド)など脂質の性質をもつもの。

見慣れない言葉で難しく感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、さらっと読み進めてください。

「脂質」の役割

あぶらのおはなし~その①(連載)[吉田管理栄養士]

脂質はたんぱく質、糖質とならび三大栄養素と呼ばれます。脂質1gあたりのエネルギーはkcal
たんぱく質、糖質が1gあたり4kcalなのに対して、脂質のエネルギーは高くなっております。
このことから脂質は太る、良くないものというイメージが強く根付いてしまっていますね。ですが、脂質も身体にとってはなくてはならない重要な役割があります。

主な役割 不足すると
・大切なエネルギー源
・細胞膜、核膜、血管壁などの構成成分
・性ホルモン、副腎皮質ホルモンなどのステロイドホルモン、ビタミンDの前駆体(材料)
・脂溶性ビタミン(ビタミンA.D,E,K)、カロテノイドの吸収を助ける
・体温保持
・皮下脂肪により内臓の保護
・髪や肌などの潤い保持
・皮膚の乾燥
・便秘
・冷え
・集中力不足
・肌荒れ
・月経不順

一般的な食事で不足することはあまり考えられないですが、極端な食事制限、特別な食事法、体重減少を目的とするダイエットなどを行っている方は特に注意が必要となります。
大切なことは、油脂の種類、特徴を知り、上手に摂り入れることです。
そこで私たちが気を付けていくポイントとなるのが、次の「脂肪酸」です。

脂肪酸の種類

脂質は「脂肪酸」が主要成分です。
脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、さらに種類分けされます。
 
飽和脂肪酸…常温で固まることが多く、動物性食品に多く含まれます。炭素鎖中に二重結合をもたない。
不飽和脂肪酸…常温で液体。植物や魚に多く含まれます。炭素鎖中に二重結合を一つだけもつものを一価脂肪酸。2つ以上もつものを多価不飽和脂肪酸。

ここから少し複雑ですが、表にしますので難しく考えすぎず、食品と結び付けてイメージしていきましょう。

飽和脂肪酸 種類 多く含まれる食品
(短鎖脂肪酸) ブタン酸など バター・やし油
(中鎖脂肪酸) オクタン酸 ラウリン酸など バター・やし油
(長鎖脂肪酸) パルミチン酸 ステアリン酸など バター・やし油

 

不飽和脂肪酸の分類 種類(すべて長鎖脂肪酸) 多く含まれる食品
一価不飽和脂肪酸 オメガ9系脂肪酸 ※1
・オレイン酸 オリーブ油・なたね(キャノーラ油)
多価不飽和脂肪酸 オメガ6系脂肪酸 ※1
・リノール酸(必須脂肪酸)※2 コーン油・大豆油・ごま油
・アラキドン酸(必須脂肪酸)※2 卵黄・レバー
オメガ3脂肪酸 ※1
・α-リノレン酸(必須脂肪酸)※2 えごま・あまに・くるみ
・EPA(エイコサペンタエン酸) 青魚
・DHA(ドコサヘキサエン酸) 青魚

12 詳しく知りたい方へ
❝脂肪酸は炭素が鎖状に配列した分子構造を持っています。その炭素の鎖の長さと炭素同士の結合方法によっていろいろな種類の脂肪酸があります。炭素の鎖の長さで分類した場合、短鎖、中鎖、長鎖脂肪酸に分類されます。バターや牛乳中には短鎖や中鎖の脂肪酸が含まれていますが、私達が一般に食べる食品中の油脂の多くは長鎖脂肪酸に属するものです。さらに脂肪酸は、炭素同士の結合方式によって大きく飽和と不飽和に大別することができます。パルミチン酸などの飽和脂肪酸は化学式の炭素の結合手が全部水素で満たされているもので、化学的には安定な構造です。一方、不飽和脂肪酸は炭素の結合の中で、水素の不足した二重結合と呼ばれるつながり方を部分的に持っているもので、酸素によって過酸化を起こしやすい不安定な構造です。さらに、不飽和脂肪酸は二重結合の数によって分類されます。その分子中に二重結合を1つだけ持つものを一価不飽和脂肪酸、2つ以上持つものを多価不飽和脂肪酸と呼んでいます。オレイン酸は二重結合を1つ持つことから一価不飽和脂肪酸、リノール酸は二重結合を2つ、α-リノレン酸は3つ、アラキドン酸は4つ持つことから多価不飽和脂肪酸の仲間となります。魚の油に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)は二重結合を5つ、DHA(ドコサヘキサエン酸)は6つも持った多価不飽和脂肪酸です。
脂肪酸の中には私達が生体内で作ることができない、しかし、体にとって重要な役割を持つものがあり、この脂肪酸を必須脂肪酸と呼びます。必須脂肪酸にはリノール酸、αリノレン酸、アラキドン酸があります。
必須脂肪酸はいずれも多価不飽和脂肪酸であるため、構造中に二重結合を持ちますが、その位置によってn-6系とn-3系の2種類に分類することができます。n-6系多価不飽和脂肪酸は、ω6omega-6とも表記し、必須脂肪酸のうちリノール酸と生体内でそれから代謝されてできるアラキドン酸などが属します。一方、n-3系多価不飽和脂肪酸はオメガω3omega-3とも表記し、必須脂肪酸であるαリノレン酸と生体内でそれから代謝されてできるEPADHAなどが属します。食事からリノール酸を取り込めばアラキドン酸が、食事からαリノレン酸を摂取すればEPADHAを作ることも可能です。しかし、互いにn-6系の脂肪酸はn-3系に、n-3系の脂肪酸はn-6系に相互変換することはできないのです。 ❞(日本脂質栄養学会HPより抜粋)。
 
少し複雑なお話もあったかもしれませんが、脂質の働きや種類がたくさんあることはご理解いただけましたか?
今回は脂質の役割や種類のお話だけでボリューミーになってしまいましたので、続きは次回以降お伝えします。
脂肪酸それぞれの特徴や働き、摂り方のコツなど、具体的なことを盛り込んでいきますので是非またご覧いただければと思います♪

 
吉田 桃子/Momoko Yoshida
管理栄養士 
くらし薬膳 栄養アドバイザー

最終更新日:2024/10/24 12:42:27