JKA日本くらし薬膳協会
秋冬の免疫力アップ大作戦[竹田くらし薬膳本部講師]

秋冬の免疫力アップ大作戦[竹田JKA主任講師]

涼しくなって秋を感じられる季節になってきましたね。秋冬にかけて毎年話題に上ってくるのが、インフルエンザの流行。今年はカゼやインフルエンザに加えて、コロナも心配です。ワクチンができても、やっぱり感染しないのが一番。自分の身体は自分で守れるようになりたいですね。そこで今回は、秋冬の免疫力を高める薬膳を紹介します。

免疫力とは

免疫力については、以前のコラム(「薬膳で免疫力をアップしよう」)でも紹介しました。
この時にお伝えした内容を簡単にまとめると、以下のようになります。

『免疫力とは気の仕事である。気の身体を守る働きには、身体を外側から守る「衛気」と、身体を内側から守る「正気」の2通りのシステムがある。そして気が不足することで免疫力は低下する。免疫力を高めるには、気を補って胃腸の働きを整えてくれる「米・芋・豆類」を意識して取り入れるようにしよう。特に朝食には、パンではなくご飯とお味噌汁がおすすめです。』

今回のコラムでは、「秋冬の免疫力を高めるための大切なポイント」についてお伝えします。
このコラムを読むと、免疫力と治癒力を低下させないように普段の生活で気を付けることや、秋冬の気候に適した食べ物について具体的に知ることができます。もしあなたが秋冬にカゼを引きやすいのであれば、その原因もわかるかもしれません。

乾燥と免疫力の関係


秋冬の免疫力を高めるために、最も大切なことは「乾燥から身体を守ること」です。

秋は燥邪(そうじゃ)の季節と言われ、乾いた空気が体調不良の原因となりやすい時期です。乾いた空気を吸い込むことで、鼻や喉の粘膜も乾燥しやすくなります。粘膜が乾燥していると、ウイルスは容易に体内に侵入しやすくなるので、粘膜の潤いを保つことは身体を守ることに繋がります。

特に、以下のようなサインが見られる時は要注意。これらは身体が乾燥していることを知らせるサインです。

□から咳が出る
□鼻の中が乾燥する
□喉がくっつく感じがする
□息をすると咳が出る
□痰がからむ
□肌が乾燥してカサカサする

口呼吸と鼻呼吸、あなたはどっち?

あなたは普段、口と鼻のどちらで呼吸していますか?
口の中が乾きやすい、寝起きに声がかすれる、よく喉が痛くなる。このような症状がある人は無意識に口呼吸になっているのかもしれません。

本来、呼吸とは鼻で行うものです。

口で呼吸をすると、乾燥した空気がダイレクトに体内に入ってきます。これでは粘膜は乾燥しやすくなり、ウイルスの侵入を防ぐことができません。口呼吸になりやすい人は、口を閉じることを意識してみてください。どうしても口呼吸になってしまう人は、秋冬にはマスクを活用することで、なるべく乾燥した空気を直接吸い込まないようにしましょう。

鼻呼吸で保湿力を鍛える

中医学では、空気の通り道となる鼻、喉、気管支に加え、直接外気に触れるお肌も肺の一部と考えます。
以前のコラムでも紹介した「衛気(えき)」という身体を外側から守るシステムも、身体が乾燥していると、本来の力を発揮できません。喉や鼻の粘膜やお肌がしっとりと潤っていることで、衛気のバリアはまんべんなく体表を覆って守ってくれます。

お肌の乾燥には血の不足も関係しますが、普段からお肌が乾燥しやすい人は、常に体内の潤いが不足していると言えます。クリームや保湿剤でお肌の潤いを守ることも大切ですが、まずは鼻呼吸を意識してみてください。それだけでびっくりするほど簡単に、乾燥肌が改善することがあります。さらに乾燥しやすい秋冬は、次に紹介する「身体に潤いを与える食べ物」も取り入れてみてくださいね。

鼻呼吸や食べ物で、身体を乾燥から守ることは、内側から保湿しているのと同じことなのです。

山芋と長芋があなたを強くする


秋冬が旬の食べ物には、身体に潤いを与えて、乾燥から守ってくれるものがたくさんあります。その代表格となるのが「山芋・長芋」です。白くて粘り気のある山芋(長芋)は、身体に潤いを与えて乾燥から守ってくれる食べ物なのです。

秋冬の免疫力アップ大作戦[竹田くらし薬膳本部講師]

さらに嬉しいことに、山芋や長芋は気を補う力も強く夏の暑さによる疲労の回復を助けてくれます。気の不足は免疫力や治癒力の低下に繋がりますので、秋冬の免疫力を高めるためには、夏に消耗した気を補うことも重要な要素のひとつです。

また山芋や長芋には、私たちの健康を支える「肺、脾、腎」の3つの内臓をケアする働きもあります。肺は呼吸で取り込んだ空気から気を作り、脾は食べ物を消化吸収して気を作ります。腎は生命力の源である精を蓄え、成長と発育、妊娠や出産、そして老化にも関わります。

実は、山芋は漢方薬にも使われています。漢方薬の世界では、山芋は「山薬(さんやく)」と呼ばれていて、山芋の皮を薄くむいて乾燥させたものが使われます。腎機能を高める漢方としてよく知られている「八味地黄丸(はちみじおうがん)」にも山薬が入っています。

このように山芋や長芋は滋養強壮に優れ、健やかな心身を養って、様々な年代におこるライフイベントを支えてくれる、とても優秀な食べ物なのです。

今こそ始める長芋生活 


薬膳では、長芋も山芋の仲間として考えますので、普段の食事では、手に入りやすい長芋を使うのが簡単です。乾燥しやすい人は、毎日食べることで変化を感じることができるでしょう。秋冬はできれば一日に一品、長芋を使ったおかずがあればいいですね。

山芋や長芋は、様々な食べ方ができます。毎日のごはん作りの参考になるように、献立のアイデアをいくつか紹介します。

●すりおろして食べる

とろろは定番の食べ方ですね。おろし器やすり鉢を使うのが一般的ですが、フードプロセッサーを使う方法もあります。一度にたくさんすりおろして、ジップロックなどに小分けにして冷凍しておくと便利ですよ。

とろろご飯の他に、マグロの山かけも人気の一品。マグロ以外にサーモンやタコ、アボカドとも相性が良いです。またホワイトソースと混ぜてグラタンにしても美味しいですよ。

〜献立のアイデア〜
とろろご飯/マグロの山かけ/とろろそば/グラタン/お味噌汁/お吸い物/卵焼き/納豆と混ぜる/海苔を巻いて礒部揚げなど

●生のまま食べる

長芋は生で食べると、シャクシャクした触感がとても美味しいですね。酢の物や和え物にする時には、皮をむいて軽く叩くことが多いですが、私はみじん切りにすることもあります。とろろよりも歯ごたえのある食感で、叩くよりも食べやすくなって美味しいです。

〜献立のアイデア〜
酢の物/和え物(梅・おかか・キムチなどと一緒に)/お漬物(塩麴や昆布醤油などに漬けて)など

●火を通して食べる

長芋は火を通すとホクホクとした食感が楽しめます。じゃがいもの代わりに色々なお料理に使えます。私のおすすめはシンプルに、輪切りにして焼くだけの長芋ステーキ。醤油とバターで味付けするのも美味しいけれど、焼肉のタレをかければ男性ウケする一品になりますよ。

〜お料理アイデア〜
肉じゃが/鶏肉と一緒に煮る/おでん/炒め物(お肉やナスと一緒に)/豚肉巻き/フライドポテト/ポテトサラダなど

その他の身体に潤いを与える食べ物 

秋冬には、身体を潤して免疫力を高めるのに役立つ食べ物が、他にもたくさんあります。

・ゆり根、白きくらげ、白ゴマ、豆乳、ヨーグルト、牛乳などの白い食べ物
・梨、いちじく、柿、りんご、びわなどの秋に旬を迎える果物
・落花生、銀杏、アーモンド、松の実などの種実類
・ハチミツ、氷砂糖、水あめなどの甘味類
・その他、卵、杏仁(甜杏仁)、オリーブオイルなど

これらは、肺や身体を潤すとともに、咳を止める働きもあります。空気が乾燥してきたなと感じたら、ぜひご自宅に常備しておいて欲しいです。

秋冬の免疫力アップ大作戦[竹田くらし薬膳本部講師]

まとめ

ここまでに紹介した「秋冬の免疫力を高めるためのポイント」を、ここにまとめておきましょう。

・最も大切なことは「乾燥から身体を守ること」
・鼻呼吸をして、乾燥した空気を直接吸い込まない
・山芋や長芋を食べることで、乾燥から身体を守る
・秋冬には、身体に潤いを与える食べ物を常備しておく

いかがでしたか?不調のサインを少しでも感じたら、食べ物を選んで食べてバランスを整えていく。そうすることで、病院へ行くほどに体調を崩すことが少なくなります。これは私が薬膳を始めて強く感じていることでもあります。

このコラムが、あなたの健康と笑顔の手助けとなりますように。

<クックパッドくらし薬膳レシピ>

〇タコと長芋のキムチ和え

 https://cookpad.com/recipe/6020354
〇長芋と蓮根の含め煮
https://cookpad.com/recipe/4250109
〇梨とミントのジュース
https://cookpad.com/recipe/4247358
〇ぷるぷる豆乳ごまプリン
https://cookpad.com/recipe/4670272
〇甘酒とヨーグルトのゼリー
https://cookpad.com/recipe/6374773
〇豚とエビと長芋のシュウマイ
https://cookpad.com/recipe/6443207

 

竹田あやこ/Ayako Takeda

JRECくらし薬膳本部講師
くらし薬膳料理研究家
国際薬膳調理師
JREC認定リフレクソロジスト
整体師

最終更新日:2025/04/01 11:45:43