JKA日本くらし薬膳協会
冬にメンタルが弱る理由[竹田くらし薬膳本部講師]

冬にメンタルが弱る理由[竹田JKA主任講師]

本格的な冬へと季節が移り行く時期。最近、なんだかメンタルが弱っているという人はいませんか?「ふとした瞬間に感じる寂しさ、悲しさ、孤独感、不安、焦り」「理由もなく気持ちが沈む」「前向きな気分になれない」「気持ちがざわざわする」など。 実はこれ、あなたの心の問題ではなく、季節のせいかもしれません。 今回は、そんな『冬のメンタル』について、心が軽くなる話をしたいと思います。

冬の憂鬱は自然な流れ

季節とメンタルの関係は、西洋医学でも研究が進められている分野。「冬季うつ病」という言葉を聞いたことがありますか?これは日照時間が短くなることで、脳内物質のセロトニンの分泌量が減って、うつ状態になってしまう現象のことです。緯度の関係で冬に日照時間がとても短くなる北欧や、仕事や生活習慣の乱れによって昼夜逆転の生活をしている人にもおこりやすいと言われています。

中医学では、季節とメンタルの関係は、古くから知られていました。それは天人合一(てんじんごういつ)という考え方にもあらわれています。これは「自然と人間は一体である」という考え方で、私たち人間は季節や気候など、自然からの影響を受けているということ。すなわち、季節や気候が心身の不調の要因となることは、とても自然なことなのです。もしあなたが、冬は精神状態が不安定になると感じているとしたら、それは季節のせいかもしれません。メンタルが弱いとか、ダメな人間だなんて、自分を責めなくても大丈夫です。

 

「華やかな春夏」と「静かな秋冬」

もともと冬は、落ち込みやすい季節と言われています。これは植物や動物の四季の過ごし方からも感じることができます。

 例えば、植物は春に芽吹き、夏に成長して、秋に実りの季節を迎え、そして冬には種や葉を落として、静かに次の春を待ちます。動物も春に繁殖の季節を迎えて新しい命を育み、そして冬には巣ごもりをしながら、静かに次の春を待ちます。

このように、冬は春夏に比べてとても静かな季節人も自然も、活発で明るい春夏から静寂で落ち着いた秋冬へと移り変わっていきます。私たちの心にも、この移り変わりがおこることで、冬は悲しさや不安を感じやすくなり、気持ちも前向きになりにくいのです。
これは逆に言えば、静かな季節に無理をして動かなくてもいいということ。春になれば、自然と前向きな気持ちが、また芽生えてくるいうことなのです。

 

あなたの冬のメンタルをサポートします

でも、メンタルを安定させて健やかに冬を過ごす為に、できることがあります。今日からできる、たった2つのポイントをお伝えします。

①最優先すべきは就寝時間

冬は日の出が遅くて日没が早い。この自然界のリズムに合わせた睡眠がおすすめです。つまり、「早く寝る」ことがとても大切。
23時には就寝しましょう。遅くても日付が変わる前には眠っていること。やることがあっても早く寝て。その代わり翌朝の起床時間を早めましょう。なぜなら、中医学では夜は陰の時間、そして冬は陰の季節とされています。つまり冬の夜は、陰が2つ重なった状態。とてもネガティブになりやすい時間帯だからです。
夜に考え事をしていて、悲しくなったり、不安になってしまったことはありませんか?私はあります。日付が変わってから帰宅し、お風呂に入って寝るまでの間に急に不安になって泣いてしまう。普段はわりと楽天的な性格の私でも、こんな状態になりやすいのが冬の夜中なのです。

さらに、夜は私たちの精神を支える「体内の陰」を養う時間帯でもありますこの「体内の陰」が不足すると、私たちの精神は不安定になり、不安、悲しみ、怒りなどのネガティブな感情を感じやすくなるのです。早く寝ることで一日の疲れを癒し「体内の陰」を養うことは、健やかなメンタルを支える、とても簡単で確実な方法です

冬にメンタルが弱る理由[竹田くらし薬膳本部講師]

②食べ物で心と体に潤いを与える

次に、食べ物からも「体内の陰」を養いましょう。中医学において冬は「閉蔵」の季節と呼ばれ、エネルギーや潤いを体内に閉じ込めて養うことで、次の季節である春に向けて静かに準備をする時期とされています。

冬の養生では「体内の陰」を補って減らさないことも重要。
体に栄養と潤いを与える血や津液などの物質が「体内の陰」と呼ばれています。これらは心と体、両方の潤いとして働きます。だから、これらが不足すると、心も体もカサカサになってしまうのです。体の変化としては、爪が割れやすくなる、髪や肌が乾燥してツヤがなくなる、疲れ目やドライアイになりやすくなります。そして心の変化としては精神が不安定になり、先ほど挙げたように、不安、悲しみ、怒りなどのネガティブな感情を感じやすくなります。睡眠と食べ物で「体内の陰」を養うことは、冬のメンタルを根底から支えることに繋がります。

~体内の陰を補う食べ物~

◇黒い食べ物は、滋陰という陰を補う働きがあります。

黒米、黒豆、黒ゴマ、黒きくらげ、ぶどう、プルーンなど

 

◇その他の陰を補う働きを持つ食べ物
にんじん、ほうれん草、山芋、牡蠣、イカ、ブリ、豚肉、卵、クルミなど

 

◇調理例

・ごはん…黒米を少し入れてご飯を炊く

・スープやお鍋…黒きくらげや牡蠣を入れる

・黒ゴマ…黒ゴマを使ったゴマ和え

・黒豆…黒豆煮、黒豆茶、黒豆せんべい

・紅茶…レーズンやプルーンを入れてドライフルーツティとして

普段の食事やおやつに意識的に取り入れるといいですね。黒豆は市販の製品を利用することで、意外と手軽に取り入れられますよ。

冬にメンタルが弱る理由[竹田くらし薬膳本部講師]

今年の冬にメンタルが弱るもう一つの理由

私の整体サロンに来られるお客様の中にも、冬になると元気がなくなる人がいます。このこと自体は、とても自然なことなので心配ありません。しかし今年は、その傾向が強くなっているように感じます。これは、コロナによる自粛や、新しい生活様式が影響しているのでしょう。

詳しく説明すると、本来なら心と体が活動的になる春から夏にかけて、今年は自粛や行動制限が多くありました。それは仕方のないことだったのですが、やはり、これが心身の不調に繋がることも、また自然なことだと感じます。
イキイキと意欲的に行動をしたり、前向きでポジティブな思考を保つことが、今年は難しかったと感じませんか?悲しいニュースやSNSへの乱暴な書き込みも多く目にしたように思います。
だから、もし心が折れそうなほどメンタルの不調を感じている場合には、自分の心が傷つくものからは距離を取って欲しいです。なにごとにも動じない強さを持つ必要はない、と私は思います。これは私からの個人的なお願いです。

まとめ

冬にメンタルが弱る理由と、あなたのメンタルをサポートする2つのポイントをお伝えしました。いかがでしたか?
まず、最優先したいのは就寝時間。冬のメンタルケアには、早く寝ることが大切です。そして、睡眠と食べ物で「体内の陰」を養って減らさないように気をつけましょう。
寒くなってきて精神面が不安定に感じていたとしても、心配しなくて大丈夫です。無理に活動的になったり、ポジティブ思考にしたりする必要はありません。次の春への準備期間として捉えて、暖かくしてゆったり過ごしてくださいね。
春になれば、また自然と前向きな気持ちが芽生えてくることも、覚えておいてください。
そして、いつも夜更かしをしてしまう人は、今日から早く寝ましょう。きっといい夢が見られますよ。

<『体内の陰を補う』クックパッドくらし薬膳レシピ>
〇魯肉飯 

https://cookpad.com/recipe/6522240

〇豚とエビと長芋のシュウマイ
https://cookpad.com/recipe/6443207

〇豚肉と野菜のしょうが焼き
https://cookpad.com/recipe/5976301

〇豚肉と卵の酸辛湯スープ
https://cookpad.com/recipe/4914843

〇黒糖くるみきなこ
https://cookpad.com/recipe/4274372

 

竹田あやこ/Ayako Takeda

JRECくらし薬膳本部講師
くらし薬膳料理研究家
国際薬膳調理師
JREC認定リフレクソロジスト
整体師

最終更新日:2025/04/01 11:40:17