JKA日本くらし薬膳協会
私が伝えたいのは家庭で作れる薬膳[竹田くらし薬膳本部講師]

私が伝えたいのは家庭で作れる薬膳[竹田JKA主任講師]

『薬膳』と聞くと、どんなことを思い浮かべますか? ◇健康に良さそう ◇漢方薬が入っている ◇独特の臭いがある ◇黒くて苦いスープ ◇体に良いけど、美味しくない こんなネガティブなイメージも強いかもしれません。私も薬膳を学び、講師として活動する前までは、そう思っていました。

でも本当は、薬膳は「心と体を整える美味しい食事」なのです。
考えてみてください。1日3回の食事で、美味しくないものを毎日食べられますか? 

私は中国政府の直轄機関が認定する薬膳の国際資格を持っていますが、私の家族は、私が作る食事を薬膳と知らずに食べています。

それは、私が美味しく上手に薬膳を作ることができるからではなく、ごく普通の、どこにでもある家庭料理が薬膳になっているからです。肉じゃが、照り焼きチキン、しょうが焼き、ポテトサラダ、ほうれん草のゴマ和え、きんぴらごぼう、炊き込みご飯、お味噌汁、卵焼き、スパゲティ、サンドイッチなど。きっと多くの家庭で定番のメニューばかりですよね。

こんな普通の家庭料理が、なぜ薬膳になるの?そう思われる方も多いと思います。実は、薬膳にはいくつかの決まり事があるのです。 

 

薬膳料理は中医学理論に基づいて作られる

薬膳は中医学の知識を使って作られます。これは漢方薬と同じ。
漢方薬は中薬(ちゅうやく)と呼ばれる自然由来の薬材を組み合わせて作られます。日本では中薬のことを生薬(しょうやく)と呼んだりしますね。 

例えば、一般的によく知られている漢方薬の「葛根湯(かっこんとう)」は、葛根(かっこん)、大棗(たいそう)、麻黄(まおう)、甘草(かんぞう)、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)、生姜(しょうきょう)といった中薬で構成されています。

そして、漢方薬の効果を得るには、不調のタイプに合ったものを選ぶことが重要です。

葛根湯は、カゼの引き始めに飲むのに適していて、首から背筋にかけてのゾクゾクした悪寒や筋肉のこわばりを感じる時に飲みます。葛根湯に入っている中薬が、体を温めて筋肉のこわばりを緩め、風寒邪と呼ばれるカゼの邪気を体から追い出してくれます。

薬膳では、カゼの引き始めのゾクゾクした悪寒を感じる時には「しょうが湯」や「ネギとしょうがのスープ」を飲みます。ネギやしょうがが体を温めて、葛根湯と同じようにカゼの邪気を体から追い出してくれます。

漢方薬も薬膳も同じ中医学理論に基づいて作られると聞くと、とても難しいことをしているように聞こえますが、ネギやしょうがに体を温める力があることは、すでに皆さんもよくご存じでしょう。 

私が伝えたいのは家庭で作れる薬膳[竹田くらし薬膳本部講師]

一般的な薬膳食材のイメージ

食材には体を元気にする力がある

「薬食同源」という言葉がありますが、これは「薬も食材も源は同じ」という意味です。実は、葛根湯に使われている中薬には、食材として使われているものが含まれています。

例えば、葛根=葛(くず)、大棗=なつめ、桂皮=シナモン、生姜=しょうが

漢方薬に使う場合には、中薬として加工されますので、普段食べている食材とは少し違う形になっているものもありますが、元はほとんど同じものです。まさに薬食同源。食材にも体を整えて元気にする力があるのです。

でも、薬にも食材にもなるようなものでしか、薬膳は作れないと思っている人も多いと思います。薬膳鍋や薬膳スープに代表されるように、特別な食材を、特別な調理工程で作るのが薬膳というイメージもあるでしょう。

確かに、漢方食材と呼ばれるような食材で作る薬膳もあります。でも、身近な食材にも体を元気にする力があると知って欲しいのです。

例えば、じゃがいも、にんじん、キャベツ、鶏肉、鮭、味噌など、家庭の冷蔵庫にあるような食材で薬膳は作れます。私の家族が薬膳だと知らないで、毎日私が作った食事を食べているように、身近な食材で作る家庭料理が薬膳になり、心と体を整える食事になるのです。

では、これらの食材がどのように薬膳になるのか、いくつか例を挙げてみましょう。

食材を選んで食べることで薬膳になる

身近な食材で薬膳を作るためには、目的に合わせて食材を選ぶことが大切です。ここで言う目的とは「体調や体質」「季節や気候」のことです。

例えば
◇カゼを引いて悪寒がするから、ネギやしょうがでスープを作った
◇から咳が出るから、ヨーグルトにイチジクとハチミツを入れて食べた
◇胃腸が弱くて疲れやすいから、鶏肉と卵で親子丼を作った
◇寒くて体が冷えたから、シナモンが入った紅茶を飲んだ
◇暑くて喉が渇くから、トマトやスイカを食べた

これらはどれも、私が普段から行っている薬膳です。近所のスーパーで買えるような食材ばかりでしょう?体調や気候に合わせて食材を選ぶ、これだけで誰でも薬膳ができます。

食材を選んで食べるようにしたら、私は子供の頃からの便秘がなくなって、スッキリ爽快な気分でトイレから出られるようになりました。また、吹き出物があまりできなくなりましたが、食べ過ぎたりして胃腸が疲れると、逆に吹き出物が現れるようになりました。

他にも、ずっと酷かった花粉症が少し楽になったり、気分の波が少なくなり大きく落ち込むことがなくなったり、悩んだりストレスを感じても前向きな気持ちに切り替えられるようになったり。

小さな変化から始まって、気が付いたら実感できる変化になっていて、本当に嬉しかったです。

私が伝えたいのは家庭で作れる薬膳[竹田くらし薬膳本部講師]

これも薬膳!我が家の食事風景

心と体からのサインを捉える感覚を育てよう
心と体からのサインを捉えられると、食べ物を選ぶ参考になります。

本来、私たちの体は自分に必要なものを自然と選ぶようにできています。例えばカゼを引いてゾクゾクと悪寒がする時に、アイスクリームを食べよう!と思う人はいませんよね。体を温める食事や飲み物が欲しくなったり、温かい服装やお布団で温まろうと考えます。

でも今、この自然な感覚がエラーを起こしている方がたくさんいます。その原因は、生活リズムの乱れ、季節感のない食生活、そして、過労とストレスだと私は考えています。心と体が常に緊張しているから感覚が鈍くなって、心と体からのサインを捉えられなくなる。言い換えれば、感覚を鈍くしないと生きていられないから。

これって、不自然だし、ちっとも幸せな事じゃない。

私自身も、ストレスで大きく体調を崩したことがあります。その時は、お料理をしても味がわからなくなり、何事にも自信が持てなくなって、全く笑顔になれませんでした。でも薬膳を学んだことで、今では心と体からのサインを捉える感覚が養われて、自分が楽しいと感じる心を取り戻し、笑顔で過ごすことができています。

自分ができることがあると心の余裕が生まれる

もちろん、私も人間なので体調を崩すこともあります。インフルエンザにかかったり、咳喘息になったり、ぎっくり腰になったりもしました。

薬膳や漢方薬で対応が難しい場合には、病院に行って治療してもらうこともあります。必要な時には、中医学と西洋医学の両方を使って体調を整えたりもします。でも、体調が悪くて不安になったり、すぐに病院に行ってたくさん薬をもらったりすることはありません。

家族の体調不良に関しても同じです。私の力ではどうしようもないこともおこります。人生っていろんなことがありますよね。

でも、どんな状況でも、自分ができることがあると、心の余裕が生まれます。私にとってはそれが薬膳です。家族の体調が悪い時、トラブルがおこった時、身近な人に不幸せな出来事があった時、私は薬膳の知識を使って、自分にできることをするのです。

自分や家族が不調や病気になっても、できることがあると安心します。

薬膳は世界を平和にする

いつも思うのは、自分自身がまず笑顔で過ごせているかということ

薬膳は、私の体調を整え、私から不安を取り除いてくれます。そして自分自身が笑顔になれば、家族や周りの人にも、笑顔で優しく接することができます。イライラした人と一緒にいるのは誰だって嫌ですよね。自分の笑顔が誰かの笑顔を作ることができる。そう考えるようになったら、不思議と私の周りには笑顔の人が集まるようになりました。

私が、薬膳や中医学の知識と使い方を、多くの方にお伝えしたい理由は、薬膳が笑顔のお役に立てると知っているからです。そして、自分自身が笑顔になることで、さらにたくさんの笑顔が生まれ、それが世界の平和へと繋がっていく。真面目にそう思っているからです。

あなたは自分を笑顔にする方法を知っていますか?

 

竹田 あやこ/Ayako Takeda 
JRECくらし薬膳本部講師
くらし薬膳料理研究家
国際薬膳調理師
JREC認定リフレクソロジスト整体師

最終更新日:2025/04/01 11:41:03